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進化論では言葉を話す人間にはならない

進化論では言葉を話す人間にはならない

進化論では、母語獲得は起こらない。
猿はどうやって言葉を獲得したのでしょうか。猿から人へと進化したと言う進化論は本当なのでしょうか。
言葉を持たない猿、言葉を持つ人の間には何があるのでしょう。
言葉の獲得がどのように起こるのか、心理学と言語学はその仕組みを明らかにします。
その理論を進化論に当てはめると、進化論では言語獲得ができないと言う結果が出てきます。
「赤ちゃんは、語学の天才」2011年パトリシア・クールと言うワシントン大学の脳言語学者は、赤ちゃんの母語の習得について次のように語っています。「赤ちゃんが言葉を覚えるのに必要なこと。それは親が言葉を赤ちゃんに語りかけることです。」と言いました。
幼児は、世界中のすべての言語を聞き分ける力があります。幼児が持つ全言語に対応する能力が母国語だけを習得する能力に収束するのは、1歳を迎える前です。母語の習得は臨界期があり、7歳以降は大きく習得力を低下させます。

 

第二言語習得の実験
アメリカの幼児に、台湾語を聞かせる実験を行いました。台湾人に教師役をお願いし、絵本を使い赤ん坊に語りかけてもらいます。幼児の脳は、台湾語に反応し、第二言語習得の準備を始めます。脳の中で、大人の言葉のデーターを集め、分類しています。言葉を統計処理しているのです。しかし、テレビ、DVDなど機械を使った教育方法では、学習反応は起こりません。幼児期の母語習得は人間関係の中で始まるからです。
言語学者であるノーム・チョムスキーは、生まれたばかりの赤ん坊は、どの国の言葉でも覚えることができます。この赤ん坊が持つ能力に、二つの理論を見出します。
1)すべての言語の根底には共通する言語規則(Universal Grammar)が存在する。そしてこの共通言語規則を、どの赤ん坊も先天的に知っている。
2)どの赤ん坊も、先天的に自分の母語を正確に構築する知識を備えている。この能力を言語構築力(Generative Grammar)と言う。

 

赤ん坊と大人と、どちらが正確に短い期間で言葉を習得できるでしょうか。それは、赤ん坊です。
言語習得についてみれば、赤ん坊の方が高度な学習能力を持っています。世界には4500〜7000の言語があると言われています。それぞれの言語は、文法が異なります。一見すると世界の言語は、全く異なる構造で成り立っていますが、すべての言語に共通する言語規則が存在します。赤ん坊は、先天的に共通言語規則を持っているのです。

 

コンラート・ロレンツと言う動物行動学者
ローレンツは、ハイイロガンのヒナを使った実験をしました。卵からかえったヒナは、初めて見た動くものに後追い行動(attachment behavior)をします。ヒナは、初めて見たものを脳に刻印します。刻印できるのは、ふか後12~17時間までです。この刻印可能な期間を臨界期と言います。ローレンツ博士のアタッチメント理論は、人の心理的成長を解明する足がかりになりました。

 

ジョン・ボウルビー 精神分析医
幼児は自分の養育者と密接な人間関係(アタッチメント)を結ぶように作られています。幼児期のアタッチメントは、人が生きるのに必要不可欠な機能です。臨界期に養育者と心理的に安定した関係が築けなかった子供は、心理的悪影響が起こります。幼児のアタッチメントにも臨界期があり生後から3歳ないし5歳までと言われています。

 

痛ましい事例になりますが、野生動物に育てられた子供や、虐待により、隔離されて育てられた子供がいます。こうした子供たちが言葉を習得する様子を見てみます。
1800年フランスのサンセルナン・シュル・ランスの森で保護されたビクター。
パリのろう学校で言葉の教育を受けます。基本的な会話は習得できませんでした。書くことができたのは『Laito牛乳』と『Oh dieu神よ』の二語です。

 

1920年インドのミドナプールの森でオオカミと暮らす二人の少女が保護されます。年下の女の子はアマラ、年上の女の子がカマラです。
1921年アマラは、腎臓の感染症で死亡します。カマラは、30ほどの単語を覚えましたが、会話は習得できませんでした。
1929年カマラは、結核にかかり死亡します。

 

ジニー
1970年、カリフォルニア州で虐待を受け保護された少女。
1歳8ヶ月から13歳までの間、密室に閉じ込められ育ったために、話すことができませんでした。施設で教育を受けますが、100語程度の語彙にとどまり、言語習得はできませんでした。

 

マリーナ・チャップマン(推定1950年生まれ)
言葉を習得しただけでなく、結婚して子供を育てた方です。
コロンビアのジャングルで4~9歳の間、オマキザルに育てられました。
ジャングルに入ってきたハンターが入ってきた時は、言葉を話すことができません。ジャングルを出た後、売春宿の下働き、ギャング一家の召使い、路上生活と暮らす場所を転々とします。施設で保護されたり、教育を受けたことはなかったようですが、生活をする中で言葉を回復したようです。これは、4歳まで家族と共に生活した経験が、言葉の回復を可能にしたのでしょう。その後、縁あってイギリスに渡り家庭を築いたということです。

 

言語習得ができた人できなかった人、その明暗を分けたのが『臨界期前に親子のアタッチメントが築けたかどうか』ということです。

 

言語習得に必要な条件とはなんでしょう。

 

条件1先天的言語能力
人間の赤ん坊が先天的に持つ共通言語規則と言語構築能力のことです。
条件2親の存在
先天的言語習得能力を働かせるためには、言葉を話す親(人間)の存在が必要になります。
条件3臨界期
臨界期を過ぎてからでは言葉を習得できないので、臨界期までに親子関係が築かれること。

 

条件1先天的言語能力、条件2親の存在、条件3臨界期、この条件を進化論に当てはめてみます。
突然変異で、猿の親からヒトの子供が一人だけ生まれた場合。赤ん坊は人間の頭脳を持って生まれてきたので条件1先天的言語能力はクリアします。しかし、赤ん坊の親は猿なので、赤ん坊に人間の言葉を聞かせることができません。条件2親の存在がNGとなり、言葉は習得できません。この環境では、赤ん坊の脳は『キーキー』という、猿のコミュニケーションを学習します。臨界期を過ぎると言語習得機能を失い、猿のコミュニケーションに特化します。人の言葉を覚えることはありません。これを何世代も繰り返しても同じ結果になります。

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